陽炎


2003/2/17 更新

 憂鬱な気分に思わずなる。
 手に持つ物体の重さが自分が何者か、はっきりと嫌ってほどわからせてくれる。
 受験、高校生をブルーにさせ、大学生になるために通る過程(まれに通らない強者もいる)のこと。
 俺はもちろん、そんな物は遥か先のことだと思っていた。否、願っていた。
 だが、現実に例外と言うのものはあまり多くないものだ。俺もこの山場を乗り越えなければいけない。
 夏は修羅場、夏を征する者は受験を征すという言葉がエラく耳に痛い季節だ。どこの予備校にも頑張れという声しか聞こえない。俺はその言葉に危機を感じながらも、いや感じたからこそここにいるのだ。
 俺の心の中で受験合格という炎を燃やす。
 だが、俺の中に煮え切れない思いがまだ、ある。
 それが何かわからない。わからないがとりあえず頑張ってみようと思った。
 だから、わざわざこんな電車賃まで払って図書館なんぞに来たのだ。
 こんな、太陽の下自転車をこぐなど自殺行為に等しい(俺にとって)。
 やはり、ゆりかごの中でボ〜ッとしていても必ずどこかの高校に行ける高校受験とは違う迫力がある。
 落ちるかもしれないという恐怖を味わらなければいけない。特に頭の悪い奴は……。
 いくら、日本の学生の数が減り、大学の口が広くなったとは言え、やらなくてはいけないというのが日本の常識で大学に受かってなんぼの世界、まさに現代日本、いや、現代社会に残る『魔の儀式』であることは間違いではないのだ。そして、この儀式は同級生すべてが敵になるという、机の上版バトルロワイヤル、しかも、一つのクラスではなく、全国の何万という同級生が敵という非常に非常に痛い痛すぎるゲームなのだ。
 世の中は平等であるというがやはりそうとは言いきれない。
 実力が、才能が、要領の良さが、その三種の神器とも呼べるものがすべてなのだ。
「はぁ」
 その中の一人になりたくなかったがしかたなくなってしまった俺はため息をもらす。
 俺は参考書をつめこんだバックを片手に、今まで何とも思っていなかったが、けっこう大きく感じられる図書館の中に侵入した。
 この五、六ヶ月かかるサバイバルゲームを征するため、俺はわざわざ図書館などに来て浸入なんぞという言葉まで使ってこの中に入って勉強しなければならない。
 すべては、隣に建設されるマンションの工事の騒音のため勉強がまともにできない状態だったからだ。
 この五、六ヶ月かかるサバイバルゲームを征するため、俺はヒーヒー声を上げながら勉強をしているわけだ。
 図書館を歩いていると、ふと見覚えがある顔があった。
 なんとなく懐かしい感じがした。
 残念なことに彼女の名前が思い出されないが同じ中学校であることはわかった。
 中学を卒業して約二年半、あのかわいらしかった少女も今や立派な女性になっている。
 俺は時の流れというのものをはっきりと感じて、なぜか自分を老人と思ってしまう。
 俺は名前を思い出せないが覚えているくらいだ、顔見知りであったことは確かだ。
「やあ、ひさしぶり」
 俺は軽い気分で声をかけた。下心がないといったら、はっきりといって言いぐらい嘘になってしまうだろう。
 と彼女はキョトンとした顔で、目を大きく開き、瞬きをしながら俺を見ていた。
 まるで、俺が変な人で、しかも見知らぬ、英語で言うストレンジマンというような目であった。俺を知らない御様子だ。
 その反応を見て、俺は勘違いをしたのではないのかというある種の恐怖を味わうような感覚に襲われた。自分の思っている子ではないのかもしれないと思った。
 そう言えば、どうして、だろう。彼女のことは知っている。それは感覚でわかるのだ。
 しかし、どういういきさつで彼女に会ったのか、自分とどんな関係だったのか、目にうかぶのは、彼女の笑顔だけ。
 その笑顔の少女と目の前の彼女は似ている。その少女が大きくなれば、なるだろう。彼女のような美人に……。
「誰ですか?」
 彼女は小首をかしげて言った。そのしぐさがたまらなく……キレイだ。
「えっ覚えてないの?」
 俺は自分の気持ちをごまかすように呟く。
 本当は彼女があの子ということに自信が全然なかった。
「はい」
 彼女は他人行儀な態度で頷いた。
「あれっ?人違いだったのかなあ」
 俺は首をひねると、なんとなくその場に居づらくなる。その場の雰囲気が悪くなってしまったので、そのまま別の机に向かう。
 その間、後ろ髪を引かれるような、身体の中にあるものをはきだしきれない、そう、針の穴に糸をなかなか通せないような気分だ。糸通しが軽くほしい。
 さらに加えていうなら、テストで昨日やった問題の答えを出そうとして、出ないような、煮え切れないだ。
 俺ははっきりいって、そんなうざい気分を紛らわすためにMDと勉強道具を取り出して、MDから流れる音楽を聞きながら、一心不乱に勉強に集中しようとした。
 しかし、時々、視界を横切っていくのは彼女のあの驚いた時の顔、小首をかしげるなんとも言えない仕種、そして、別れる時のあのちょっとしかめた顔。
 それらがめちゃくちゃ俺の心を乱す。困ったことにそれが俺の勉強のジャマをする。
 俺はそれを忘れようと思って黙々と、必死に勉強した。

2003/2/18 更新

 気付くと、すでに九時半入りしたのに午後一時になっていた。
 俺もやればできるなど、自分を褒めてからふと彼女のことが気になって彼女の方を伺って見た。
 彼女はまだいた。そして、彼女も顔を上げてこちらを見た。
 いきなりだったので視線をそらせない、お見事っていう電子音が聞こえそうなほどの二人のタイミングだった。
 俺は運命の必然って奴を感じた。
 だが、彼女は立ち上がって歩き出した。  そのまま外にいってしまう。俺はその反応がちょっとおかしいと、なんの根拠があるのかわからないがそう思った。
 俺はじっと彼女が出入口の方まで行くのを見つめていた。
 彼女はどうやら昼食を食べに出かけたようである。と、彼女がいなくなって、肩をポンポンたたかれた。
 俺が振り向くとそこには中学時代からの友人でクロと呼ばれる男がいた。
 っつうか、クロというあだ名が先行していて本名の方はまったく覚えていない。
「よう」
「クロか」
 クロは自分の名前を呼ばれて苦笑いを作った。あまり、呼ばれることを好ましく思っていないようである。
「クロか、すっかり呼びなれたもんな」
 クロは皮肉を呟いた。
「まあな」
「まあいいや、俺もそう名乗っているし」
 どうやら、その呼び名がすっかり定着しているようである。
「そういえば、さっきの島原さんだな」
 出入口の方を指差していった。
 島原、記憶にない名前だ。
「島原……?誰?それ?」
 俺はクエスチョンマークを三つ出してクロに尋ねると、クロはずるっと滑る。机につけていた手がガクッとまがったからだ。
「おいおい、ディープな冗談を……」
 クロは苦笑いをする。
「一年間いた転校生だよ。覚えていないのか?ほらけっこう行事とかで頑張っていた子だよ」
 俺はアゴを左右にふって、覚えていないことを体で示した。
 それを見て、クロは頬をかいて天井の方に瞳だけ動かして見た。
 何か考えているようだ。
「あれ?いたっけ?」
 俺にはそんな転校生の記憶はない。
「おかしいな」
 クロは不服のありそうな顔になる。
 俺はその理由が気になって、尋ねた。
「何が?」
 俺の頭の中がミシンでからまった糸のようにこんがらかっていく。どういうことなんだろうか?
 と、クロは静かに言った。
 その言葉を聞いた時、俺の頭の中が真っ白になった。そして、ある映像がスタートし始めた。
 その言葉はこうだった。
「お前、彼女に告られたんだろ?」

 目の前には、顔を真っ赤にした少女。
 彼女は、両手を後ろにまわして何かやっている。はちきれんばかりの緊張を紛らわしているようだ。
「私、君のこと好きなんだ」
 目の前の少女はためらいながら、恥ずかしそうに言った。

 俺はその時、なんといったのだろう。
 彼女に何をしたのだろう。
 俺はいったい、どうしたのだろう。
 俺はいったい……。
 そこから先の記憶がない。
 消えてる。なくなっている。
 どうしてだ?
 そんな……そんなことって……。

「どうした?」
 クロの声によって、俺は現実に引き戻された。クロは心配そうな目で俺を見ているが、
俺はクロにワケを言う余裕もなく立ち上がった。
 俺は今すぐに彼女に会わなければいけないような気がした。
 そうすることによって、記憶を、大切なはずの記憶を取り戻さなければいけなかった。
 そして、記憶の他にもう一つの何かを……。
 俺は、そのまま走り出した。
 クロが俺の反応に驚いて、「おい」と呼びかけたが、おれは足を止めず走り出した。
 クロを無視した。クロにかまっている暇も余裕もなかった。

2003/2/20更新

 俺はひたすら走った。
 町中を、ビルの中を、人ごみの中を。
 彼女を探して、走った。
 ひたすらに、懸命に、頑張って。
 走った。駆け上がった。下がった。まわった。よけた。また、走った。

   気付くと、また図書館に戻っていた。
「おつかれさん」
 クロは、そう言うと、俺にタオルを渡した。俺の吹き出る汗をぬぐえってことだろう多分。
 俺はそれをかすめ取るように受けとった。
「つかってないから安心しろ。それにそいつは俺のじゃない
」 「え?」
 クロの口から出た言葉に驚く。
 俺の中にある期待が生まれる。
 クロは俺の期待に応えるかのように笑みをこぼす。
「ほらほら、姫を待たしちゃあいかんよ」
 俺はそう言われ、図書室の門の前に立つ。
 甘い匂いがする。男の匂いではない。
 俺はそのすばらしいタオルで、顔からふき出る汗をぬぐうと、中に入った。
 白く大きな建物、図書館……。

 俺は、重いドアをあけ、その次の自動ドアをくぐって中に入った。
 彼女は、俺の座っていた、教科書などがおいてある席に居心地悪そうに指していた。
 俺は彼女の前に立った。
 俺は彼女を黙って見つめた。
「とりあえず、場所を移そう」
 彼女もそれには、異議がなかった。

 俺たちは、会話をしても大丈夫な場所に来ると机に座って向かい合っていた。
 と、俺は彼女のことをどう思っていたのか、彼女に対して何をしたのか、そんなことがしかも悪い方にしか考えられなくなり、背筋を凍らせた。
「俺は……」
「ごめんなさい」
 彼女に何をしたのか言う前に、彼女が俺に対してわりこむように謝った。
 謝りたいのは俺の方だ。俺は君のこと忘れているのだから……。
 俺はどうして、彼女に先を越されたんだろう。俺の方が悪いのに……。
 俺は君を忘れたことを謝らなければいけないのというのに……。
「どういして、君が謝るんだ?」
「だって、」
「俺は君を忘れたというのに……」
 俺は声を低くして言った。
 まるで自分の声ではないような冷たさがその声にはあった。
 その声を聞いて、彼女の瞳がうるむ。
「ごめんなさい」
 彼女はもう一度謝った。
 そうやら、俺は彼女に何かされたようである。それが何かわからないが……。
「なんで謝るんだ?俺の方が罪が……」
「そんなことない!そんなこと……」
 彼女は、悪夢や何かをふりはらうような大きな声を上げて、俺の言葉を止めた。
「だって、私が、約束破ったんだもん」
 ヤクソク?ヤ…ク…ソ…ク?約束?
 いったい、俺は彼女とどんな約束をしたんだろう。
 それを破った?どういうことだ?
 いったい……。

 駅の改札口で、ただ一人寂しそうにうつむきたたずむ自分の姿を思い浮かべた。
 そこは、ここらへんでは一番海に近いホーム、そこで誰かを待っている自分がいた。
 自分だけが時が止まったように動かない。
 その姿が俺の胸を、いや心をしめつけた。
 まるで、手で心臓を掴まれているような苦しさだった。呼吸さえままならない。

「俺はあそこにいるのか?まだ、いるのか?あれから三年も経っているのに…….まだ……」
 俺はゆっくりと顔を上げた。
 俺の目の前には、彼女がいた。あの時、来るはずだった少女が目の前にいるのだ。
 二度と会えない、会うまいと思っていた少女が今ここに。
 奇跡としか思えなかった。
「君は……」
「思い出したの?」
 彼女の瞳から、ポロッと涙がこぼれる。
 俺の視界が霞がかる。
 俺の口から一つの言葉が出て来た。
 その言葉は、俺がずっと言いたかった言葉なのかもしれない。
 そして、その言葉は、俺が失ったものを取り戻すパスワードになっていた。
 その言葉こそ、
「やっと来てくれたんだね」
 俺の心の中にある何かが溶けていくような気がした。

 少年の耳に少女の高い声が響く。
 少年はゆっくりと顔を上げた。
 真夏の陽炎を背に少女が走ってくる。
 まるで少女の姿が幻のようである。
 楽しそうな、太陽のような明るい笑顔で。
 少年も少女の方に向かって、その少女の名を呼んで近付いていった。

「やっと、逢えたね」
 彼女はニコッと笑って答えた。
 俺の体をうれしさの百万ボルトが駆けぬけていった。
 彼女がまだ、あの時のことを覚えてくれたことを……
 それに対して、俺は辛すぎて忘れていたのに、辛かったのは、彼女も同じなのに。
 彼女は凄いと思う。
 なんとも自分が情けなく感じた。
 しかも、あの時のことを思い出させてくれたのだ。
 忘れていた、忘れようとして、心の中にしまっていたものをを呼び覚ましたことに、今までのことをふくめれば感謝の気持ちは口で表すには惜しいくらいだ。
「君に会えてよかった」
 俺は感謝の気持ちでいっぱいだった。
 だが、大きくなった俺には、感謝の方が大きくて、昔のような感情が生まれなかった。
 どうしてだろうか?
 おそらく、それは、彼女も同じだろう。
「ありがとう」
 彼女も笑って言った。それが俺にとって、唯一の救いなのかもしれない。

2003/2/20更新

 俺と彼女は二人でそれからの生活のことを話したり、世間話をした。
 幸せな時間を二人で過ごした。
 楽しい時は早く行ってしまうもので、時計が四時をさし、もうすぐ、図書館が閉館を迎える時間だ。
 彼女は立ち上がると歩き出した。
 お帰りの時間らしい。
 俺は思いっきりテンションを下げた。
 しばらくたって、クロがやって来た。
 クロは俺の顔を見て、首をかしげた。
「なかなか、おもろいな君ら」
「何が?」
 クロの言葉の意味がわからないし、そのおもしろいで何かを片付けるクロを嫌な奴だとちょっぴり思った。
「いいのかい?あのまま、彼女を行かせちまって……」
 クロの人をなめた口調がムカついて、突き放すように言った。
「なんだよ。黙れよ。お前には関係ない」
「何怒ってんだか」
 クロはそう言って肩をすくめた。
 俺はどうして怒っているのかわからないがクロがムカつく奴ということだけははっきりとわかった。
 クロはそんな俺の心を見透かすように言った。
「お前さ、なんかおかしいな。なんかあったのか?まだ、自分の中にわだかまりっていうカンジの小難しい奴をもっているんじゃねえのか?」
「お前に何がわかる」
 俺は殺意を覚えて言った。
 とクロは、キョトンとした目で、
「わかんねえから聞いているんだろう?」
 俺の悪口にあっさり答えた。
 その言葉に、俺は拍子抜けになる。
 そんな俺を尻目に続ける。
「つうか、俺はな、お前をバカにするつもりなんてノミぐらいしかないって言ってんだなこれが……」
「ようは言ってんじゃねえか」
「気にするな、ノミだ」
「はいはい」
 俺はため息をついた。どうやら、クロは俺を疲れさせたいらしい。
「で、このままでいいのかい?」
 クロはいきなり真剣な顔になる。ふざけたり真剣になったり、忙しい奴だ。
「どういう意味だ?」
 疲れを感じながら聞き返した。
「お前さ、まだ、本当は彼女のこと許していないんじゃないのか?」
 俺はその言葉が胸にささった。
「彼女を受け入れられないのは、そのためなんだろう?」
 胸がズキズキといたむ。
「お前、本当は……」
 とその時、クロは言葉を止めた。
 俺は胸の痛みを感じながら、立っているクロに向けて、イスに座る俺は見上げるようにクロに尋ねた。
「よくわかんないんだが……」  それを聞くとクロは苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、よく考えろ。あの子に出してやりな。たぶん、面白い答えが返ってくるだろうから……」
 クロは一歩足を踏み出した。
「じゃあ、俺、行くわ」
 手を振って挨拶するとクロは出入口に向かって歩き出した。

 クロがいなくなってから、俺は目をゆっくりとつぶった。そして、呟く。
「俺は、いったい何がしたいんだろう」
 どうして、クロの言葉に対して、あんなに怒りを覚えたのだろう?
 その答えを知っていたから?
 わかっていたから?
 言われなくとも……。
 俺はイスから立ち上がった。
「そうか。そうなんだ!」
 俺は叫んでいた。何人かの人が何事かと思って俺を見たかもしれないが俺は気にする余裕なんてなかった。
 俺は時計を見た。
 彼女が出ていってからそんなにたっていない。まだ、間に合う!
 俺はもう一度走った。
 さっき、どうして、あんなに走ったのか。あんなに一生懸命になったのか。
 それは単純にそして、純粋に、

 彼女のことが恋しかったから……


2003/2/20更新

俺は彼女が電車に乗って帰ると言ったから、駅の改札口に行ってみて、俺は大きく目を開き飛び出しそうになった。
 驚愕と歓喜の気持ちで胸がいっぱいだ。  彼女は、あの時、あの時の俺のように、駅の入口で、俺を、この俺を、こんなどうしようもない俺を待っていてくれたのだ。
 約束もしないで……
 うれしかった。本当に……
 うれしくて、もう一度涙が出て来た。  彼女も俺のことに気付いて、目をキラキラと湿らせる。
 俺は彼女の前に立つ。
「どうして、ここにいるんだ?」
 息を荒くしたまま尋ねた。答えはわかっていた。でも、聞かずにはいられなかった。
「なんとなく………って言ったら嘘になるね」
 意外な言葉に俺は驚く。
「クロがね。一度私に言ったんだ。『もう、帰るのかい?』ってね」
 あいつが仕組んだのかと思うと、少し重い気分になるが、感謝したい気分のほうが若干強い。
「そしたらね。あなたのことが浮かんだの。もしかしたらって思って……」
 彼女の目から、涙がポロリ。
 俺の目からも、涙がポロリ。
「俺も、クロに『よく考えて、あの子に言ってみな』って言われてから、君の顔をずっと浮かべて、君のことだけを考えていた。そしたらね」
 俺は大きく深呼吸をして、荒い息を正常ぐらいに整える。
 そして、考えをのべた。
「君が好きだ。つきあってほしい」  すると、彼女はニコッと笑った。
「また、約束やぶるかもよ」
 彼女はちょっといじわるなことを言う。
 でも、俺ははっきりとした口調で言った。
「かまわない。俺は誰よりも君が、大切だから、愛しているから……」
「……よかった」
 そう言うと、彼女は俺に抱きついた。
 柔らかい女性の温もりがたまらない。
「私の答えはね、3年前と同じだよ」
 子猫のような、甘えるような声で言った。
 彼女が昔告白した言葉を思い出し、俺は苦笑いをして、頷いた。
「そうだな」
 それから俺は、彼女の体を抱きしめながらもう忘れないと誓った。

 陽炎と眩しい日ざし
        ゆらゆらと灰色の上でダンスを踊る

「たく、忘れ物の多い人は困ったもんだ」
 詩人は手に荷物を持ちながらボヤく。
「まっ、これは忘れてもいいかもしれないがそいつは忘れるなよっと」
 すでに四時を過ぎているのに眩しい太陽を顔をしかめながら見て言った。
「つうか、俺には関係ないか……」

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