開放者(wall breaker)




2003/2/23
  

プロローグ


 空には黒雲が広がり、時々、気まぐれな雷の光がその黒のカーペットから顔を出す。
 その空の下二人の男女がいた。
 二人とも緑色のローブを着ていて、そのフードから顔を出していた。
「俺達には何もできないのか」
 男は呆然と立ちつくしていた。その黒い瞳からは悔しさの涙が溢れ出る。
「まだ、何かあるはずよ」
 女の目にはまだ諦めではなく希望という光がかすかに輝いていた。
「しかし……」
 男は困ったような顔をしてうつむき、しばらくして、天を見上げた。
 そこには黒髪を柳のように伸ばしている女が遠くを見つめていた。
 その先に何があるのかは定かではない。
 彼女の周りには、彼女を守るように電子波がのバリアーが貼っていた。
「彼女は必ず助かる」
 女は力強く言った。興奮するあまり額から汗が出ていた。
―そうか、俺達が『助かる』と信じなきゃいけない。悪いことばかり考えちゃ辛いだけだ。今の俺にできることは………そうか。
 男は立ち上がった。
「どうするの」
 女は男の様子に驚き、尋ねた。
 男はニコッと笑うと目をつぶった。
 女の額に皺が寄った。
 すると、男のローブから二つの小さなコブが出てきて少しづつ大きくなって、とうとうその男のローブを破った。中からは男のたくましい筋肉と白い2mはある白い翼。白鳥を思わせるほど、優雅で美しかった。
「まさか……やめて!!」
 みるみるうちに女の顔は青ざめ叫んだ。
 女はその男のズボンの裾を掴む。
 男はその女の手を振り払うと。その電子波の球体に向かって舞い上がった。
「やめて〜〜〜〜〜」
 女はその男を止めようと叫んだ。心からの叫びだった。
 男は気まぐれな光の槍を避けながら進む。
 どうやら、女の声は聞こえなかったようだ。
 空に向かって上昇していく。
 男に迷いはなかった。

2003/2/26更新

ストーリー


―私は誰?
 彼女は暗闇の中にいた。どこまで行ってもずっと暗い世界だった。
―私の心は何処……私の居場所は……
 私は今、バラの籠に閉じ込められていた。
―私は誰……
 彼女は再び同じ問をした。しかし、その返答は皆無だった。その世界には彼女しかいなかった。
―私はどうすればいいのだろう。
 彼女は暗闇にぽっかりと開いた穴から外の様子をバラの籠ごしに見た。
 そこにはもう一人の自分がいた。
 もう一人の自分は楽しそうに友達と話していた。
―私は……本当にこれでいいのだろうか?
 もう一人の自分にふと影がさす。
―これでいいのだろうか。
 彼女はしだいに自分がわからなくなっていった。
―どうすればいいのだろうか?
 彼女の目から涙があふれた。  絶望という涙だった。
―私は……
 彼女はさらに深い闇につつまれた。

 青年は目を覚ました。
 その大きな瞳を開いた。
 髪には軽い寝癖がついていて髪の毛が二、三本立っていた。
 その髪を一掻きすると彼はベットから出た。
 すると目の前に小さな翼をはやした人が出てきた。身長はだいたい六十センチくらいだ。
「雅男、起きましたか?」
 その黒く綺麗な髪をなびかせた。
「おはよう、聖花。今日も綺麗だよ」
 彼に言われその妖精らしき女はうれしそうに顔を赤くした。
 その様子を冷たい目で見ながら、まだ完全に目覚めていない彼は居間に向かって歩き出した。
「ふぅわ〜〜」
 と一欠伸しながらゆっくりと階段を降りる。
 すると彼女は彼の後ろについていく。
「まってよ〜。わかってんの。あなたは壁を破る者なのよ」
「はいはい」
 彼は上の空で聞いていた。
 壁を破る者(ウォールブレイカー)とは昔竜斗とかいう戦士がいてその戦士と同じ遺伝子を持つものと聖花は言っていた。そんなことは彼もしっかり覚えているので真面目に聞く必要はないと彼は思ったので聞かなかった。
「ちゃんと人の話を聞きなさい」
 彼のいいかげんな態度に彼女は怒った。
「っていうか、お前人だっけ……」
 と彼の冷たい一言。彼女は瞬時に固まった。叩いたらきっと鐘のようなボーンという音が多分出るだろう。
「もう、何言ってんの。それ以上怒らすと酷い目にあわせるから」
 彼女は持ち直し、髪を逆立てた。
「そう。どんな目に遭うんだろう」
 彼はそんなことには興味なさそうだ。
「もういいよ。今夜、覚えてなさいよ」
 彼女はそう言うと悔しそうに二階の方に上がっていった。
「たくもう、あいつわけがわからん」
 彼は彼女の背中を見ながらそうつぶやいた。それからため息をつくともう一回気合を入れた。
「さて、俺も今日から高校生だ」
 彼は創立二十年の自分の家の天井を見た。
 まだ、そんなに汚れていなかった。
「さあ、新しいスクールライフはどうするべ」
 彼は飯(食卓((の自分の席)))に向かって歩き出した。
「壁を破る者か。俺は一体どうなっていくんだろう」
 食卓に並ぶ朝食のメニューを見ながら小さな声で呟いた。誰にも聞こえないだろう。
 焼き立ての目玉焼きからは湯気が上がっていた。その湯気が彼の曇った気持ちと同じくらいの曇りぐあいだった。
 彼はそれを見てため息をついた。それから顔を上げ、全身に気合を入れ、テーブルに並ぶ朝の定番メニューを平らげようと箸を持った。

2003/3/3更新
 彼はその日の入学式を終わらせ、家に帰るため自転車を走らせていた。
 すると、2丁目の曲がり角の所に一人の女子高生がいた。
 どうやら、うちの学校の生徒らしい。
 スカートの長さや髪の色から判断すると入りたてのピカピカの一年生のようだ。肌の色は雪のように白い
――ああ、こういう純粋そうな子も変化するのか……
 彼はやりきれない気持ちになった。
 高校生とは大人の女へと変化して行く時である。
 それはオバさんへの道という言でもある。
 彼はため息を思わずついた。
 それから、濃い色の青空を見上げた。
 今日は雲もなくすばらしいという言葉しか浮かばないほど良い天気だった。
 お天道様の光がちょっと暑さを感じる程度だった。
 再び彼はその高校生に視線を戻した。
 彼女は突然頭を抱え込んだ。
 そのまま下にしゃがんだ。
――いったい、どうしたんだろう?
 彼は彼女の近くでブレーキをかけた。
 彼の思ったよりもスピードが出ていたらしく、キィッという音をたててから彼の自転車は止まった。彼もちょっと前につんのめりそうになった。
 彼は急いで自転車から降り、彼女の近くに寄った。 「大丈夫ですか?」  彼は優しい声をかけた。内心は超ラッキーだと思っている。
 しかし、彼女はうずくまっていた。しかも小さい声で痛い痛いと言っていた。
「おい、しっかりしろ」  彼は彼女の体を抱き上げた。  容姿はかなり恥ずかしい格好だろう。
 しかし、今の彼にそんなことを気にする余裕はなかった。現に目の前に一人の女の人が倒れているのだ。そんな事考える暇はなかった。
「大丈夫か、おい」  彼が怒鳴り声を上げても一向に応じない。  彼は彼女の額に手を当てる。別に熱くはなかった。風邪ではなさそうだ。
 彼は辺りを見回した。
 すると何時の間にか女子高生くらいの女性がいた。
「あの救急車を呼んで……」
 と彼が言いかけた時、彼女の目の周りに紫色の深いくまが急に出て来た。
「君、寝不足なの?」
 彼は思わず聞いてしまった。
「ふっ、これからお前は死ぬのだ」
 その女性は口を開いた。妙に低い声だ。まるで男のようだった。
「そんなことを言ってないで手伝って下さいよ。おねげえします」
 彼はそう頼んでから倒れている彼女を見た。
「ん?」
 彼はある異変に気付いた。
 彼は確かめるようにもう一人の方を見た。
 何故か、その二人はよく似ていた。
――この二人双子?
 けっこう二人ともかわいいが片方がちょっとくまがあり過ぎだ。
「さあ、手伝って!」
 彼は出来るだけ爽やかに言った。

2003/3/4更新
 すると前に立つ少女は言った。
「うるさい!」
 くまのある少女の髪の毛が逆立つ。
「うわっ!」
 その瞬間、彼はブロック塀に体を叩きつけられた。
 ものすごい突風が吹いたのだ。
 その風のせいで彼の体が動かない。
「くう、体が……」
 彼はブロック塀に叩きつけられたまま貼り付けにされていたのだ。
「お前はもう私の世界にいるのだ」
 女はかなり低い声で言った。
 その恐ろしさと言ったら身の毛が弥立つようだった。
「お前の世界?」
 額に彼は皺を寄せた。
「そう、私の世界、私だけの世界、私が自由に操れる世界。ここでは私が最強であり、この私が法なのだ」
 彼女は余裕たっぷりに、余裕いっぱいで言った。
「つまり、ここは幻想世界と言うわけか」
 彼は微笑んだ。
「そのとおり、貴様がこの私に触れた時から、この世界に入りこんだのだ」
「どうりで似てると思ったぜ。あんたも運の酷いヤツだな。この俺をあんたの世界に入れるなんて……。ここで俺をなぶり殺しでもする気かい?偽者さんよ。本当のあんたは何処にいる?それとも、あんたは外来者かい?」
 彼は相手を嘲笑うかのように言った。いつも、ヌーボー君のような彼からは信じられない言葉だった。彼の目には自信と言う文字がはっきりと浮かんでいた。(別に本当に自信と言う文字が書いてあるわけではない)
「くう、そこまでわかるとは……貴様、只者ではないな。貴様何者だ!」
 その女は驚きのあまり後ろにおののく。
「壁を破る者、ウォールブレイカーだ!」
 彼の顔が真剣になった。
「くっ、まさか、竜斗の転生者。もしくは同じ遺伝子を持つもの」
 その女の顔が青ざめる。
「悪いが俺は前者ではなく後者だ」
「くう。おのれ〜〜」
 その女の美しい姿が見る見る変わって行く。
 女の手は大きくなり、大きないぼいぼがでてくる。その次に足にも同じ変化が起きる。頭には平べったい耳が二つ生え、その長い髪はババッと地面に落ちる。そしてその体は風船のように膨らんだ。
 その体はなんとも口では言い表せないほど不気味だった。
「豚か……」
 その変わり果てた女の姿を見て思わず溢した。
 鼻が変形して豚のようになっていた。
「うるさい、この野郎。殺してやる!」
 そういうと豚の怪物は彼に襲いかかった。

2003/3/6更新
 怪物はその巨体から信じられないほどのスピードを出した。およそ、時速50キロぐらいだろう。
 その巨体で時速50キロの体当たりを食らったらふっとぶどころの話ではない。確実に死ぬだろう。
 だがそれを跳び箱を越えるようにその体の上に両手を置き跳んだ。すると怪物は彼の下をくぐる。
「バカだな。お前」

2003/4/12更新
 と彼が言ったとたん、そのままの勢いで塀に頭をぶつけた。
「グぉ〜〜」
 怪物は低い声で痛がった。
「てめえらなら、本気出してもいいよな」
 彼はニヤついた。
 怪物の顔が真っ青になる。
「やめろ〜〜〜」
 怪物はひ弱な声を上げた。
 さっきとは立場が逆転したように見えた。ここで本来なら彼が土下座するべきだろう。
 端から見て明らかにおかしい光景だった。
「もう、終わりにしようぜ」
 彼は右手の甲をその怪物に見せた。そして彼の指先が光に包まれた。
「めんどくさそうだから、消してやるよ。この世から……」
「ひえ〜〜〜」
 怪物は叫び声をあげた。
「さっ、とっとと終わらせるぜ」
 彼はそう言うとその光る右手を振った。
 その手が怪物の体に触れた。すると怪物は小さな砂になり消滅した。
 それを見つめて、彼は気楽に言った。
「さて、閉じ込められた子を助けに行くかあ」
 と、彼が言うと幻想世界の空が黒くなりだした。
「やばいな、崩れる」
 彼は目を閉じた。 ――体よ浮け……  と彼は念じた。この世界は念じれば大抵のことは出来る。体を浮かす事もその中の一つなのだ。
「さて、これからが本番だ」
 と、彼は崩れていく世界を見ながら言った。
 さっき、彼が立っていた地面も叩きつけられた塀も崩れていく。
 そう、この世界はさっきの怪物が作った世界なのだ。その怪物が死ねばその世界もなくなる。所詮は誰か他の人の心の世界の上に作った世界にしか過ぎないが……
「よし、行くか」
 彼は前方を見た。そこにはバラの囲いに包まれた一人の少女がいた。
 彼はそこに向かって歩き出していた。
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